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  • 増田-入社19年目-
  • 藤本-入社12年目-
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A.P.WORKS

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「A.P.WORKS」は、アドブレーンのオリジナルプロダクトを企画・制作するプロジェクトチームです。グラフィックデザイナーのひらめきや遊びごころから生まれた、毎日をちょっと楽しくするプロダクトは、一部商品化されてミュージアムショップ等で販売されています。発足者である増田さんと、運営メンバーの藤本さんにあれこれ聞いてみました!

A.P.WORKSができるまで

A.P.WORKSが始まったきっかけを教えてください!

増田:仕事で作るような印刷物の広告以外に、物のデザインをやってみたいと思っていた時期があって。入社3年目ぐらいのときに、会社に「プロダクトを作るサークル的なものを設けてもらえませんか?」という話をした。そうしたら、「まずは自分の周りに声をかけてみたら?」と言われたので、歳の近い先輩や後輩に声をかけて5、6人からスタートしました。

個人ではなく、会社でやろうと思ったのはなぜですか?

増田:社会人になってから、自主制作をしても自己満足で終わってる気がして、あまり手応えを感じられなかった。作品を社会に結びつけながらアウトプットしていく必要性を感じたので、会社を巻き込んでみようかなと。会社に決裁してもらって制作していくほうが、やりがいも出てくるのではないかと思った。

メンバーが集まってすぐにプロダクトを作り始めましたか?

増田:まずは会社のプロジェクトとして、また自分たちの表現の場として、どういう方向性がいいのか?1年ぐらいメンバーと企画書を練ったよ。10年ぐらい先まで見越したプランを立てて、社長にプレゼンしに行ったら「まずは会社のお年賀を作ってみたらどうかな?」と言ってもらえたので、お年賀を作ることになりました。

一番最初に作った物はどれですか?

増田:最初に作ったのは「kamitaba」というクリップの跡があるメモパッド。当時、コピー用紙をガサッと持って会議に参加する人が多かった。そんな感じで気軽に使えるメモパッドがあったらいいなと。余計なデザインを削ぎ落とすことで、1つのアイデアを表現できるメモパッドになるのかなと考えて作ったよ。

藤本:かっこいいです!私は「kamitaba」がA.P.WORKSを象徴するプロダクトという感覚があるので、よく参考にしています。

基盤に真面目さがあって、プラス遊び心みたいな感じですか?

増田:そうだね。遊び心とかひらめきとか、「ああなるほど」みたいなものをデザインに落とし込みたいと思ってずっとやってる。

プロジェクトの進め方

「kamitaba」はどうやってできましたか?

増田:初期のメンバーで自由に企画を持ち寄った。そこで「ノートってお年賀にちょうどいいね!」ってなって、みんなで考えながら仕上げていきました。

プロダクトによって関わる人数は変わりますか?

増田:プロダクトではなく、お年賀とか展示会とかのイベントごとにチームができる。出入りが自由だから、メンバーは都度変わるし、やりたい人は途中からでも入れるよ。A.P.WORKSができて3年ぐらい経つと、会社のお年賀を作ることが定番になったので、新入社員も企画に参加してもらうようになった。

藤本:たまにスカウトもありますよね。「こういうのはあのデザイナーが得意そうだから、案出しに参加してもらおうよ」って言って、実際に参加してもらったり。なので、最近はいろんな人に声をかけてアイデアを出してもらうことが多いです。

いろんな人が参加するようになってからは、どうやってプロジェクトを進めていますか?

増田:企画は自由に持ち寄って、その中からみんなで投票をしてどの案がいいかを決める。決まったら、実現性を考えながらブラッシュアップする。企画は良くても、予算がオーバーしたり、作る工程が複雑だと実現が難しかったりする。課題をクリアできるようにみんなで意見を出し合ったら、発案者がそれを踏まえてデザインを見直すという作業を何回か繰り返す。最後に、発注する業者に軽くヒアリングをして、実現性と予算感をクリアできそうな企画を会社に提案する。

思わぬ落とし穴

作る物が決まったら、その後はどうなりますか?

増田:そこからは実際に業者に発注するよ。

藤本:予想外なことに、自分たちが普通にできると思っていた工程が、いざ業者の人に持ち込んでみると、「それ難しいですよ」って言われることがある。だから何かあったときのために、2案くらい残してるんだよね。本当に実現できるかどうかは最後までわからないので。実現するためには、企画やデザインの部分で妥協が必要なときもあって。そのときに企画やデザインの「核」にどれくらい触れているのか、どこまで妥協できるのか決断が必要になる。デザイナーの仕事で培ってきた経験が生きないこともあるので、「こんなに難しいんだ」って思いましたね。

増田:A.P.WORKSが大事にしている1つのアイデアやひらめきが見えるデザイン部分って、物を作る過程では普段やらないような作業が入ってきたりする。だから、業者の人に「そんなことはやったことがないんですけど・・・」って困った感じで言われることは結構あるね(笑)「kamitaba」も最初は軽く考えてたけど、実際は難しかった。クリップのエンボス加工を全部のページに入れると非効率で、お金もすごくかかる。ノートの天面をのりで綴じるんだけど、エンボス加工を入れると揃えて綴じるのが難しくなっちゃう。だからクリップの跡は表紙だけにあって、中のページにはないんだよね。

藤本:戦いでもありますよね。私たちは「やったことがない」=「新しいこと」だからやりたいのだけど・・・。新しいことをやるって、現場ではめちゃくちゃハードルが高い。「ORUNO」も布を染めるときに、「箔は普通の特色に変更できないか?」って業者の人に言われましたよね。

増田:うん。金色の部分はもちろん箔を使っているんだけど、他にも7色ぐらい使っていて。業者の人に「コストが上がるから、多色では普通やらないですよ」って言われたけど、こっちも意地になって「それでもかまいません!」みたいなスタンスだった(笑)

藤本:相手はこれまで問題なく売れる物を作ってますからね。「洗濯機に入れたり、乾燥機にかけたら、箔が剥がれちゃいますけど・・・」って色々と忠告してもらったけど、「剥がれてもいいんです!」みたいな。変なこだわりを持ってる人たちに見えてただろうなと思う(笑)

でもやったことがないことにチャレンジするって、すごいなって思いました!

平面と立体でこんなに勝手が違うんですね・・・!

藤本:でも他にもプロダクトを作ってるデザイナーって世の中にいるじゃないですか?私たちもそういう事情を知ってから、いろんなハードルを乗り越えなきゃいけないのにみんなどうやってあんなクオリティの高い物を作ってるの!?って、驚かされることが多いです。

増田:僕の場合はもう15年ぐらいやってるから、できるかできないは経験値でなんとなくわかる。だけど、企画の時点からそれを意識しちゃうと話にならなかったりするので、企画を持ち寄るときはあえて広めに条件を設定して、最小限の注意点だけ伝えてます。

プロダクトへのこだわり

素敵なデザインを作るうえで心がけていることはありますか?

藤本:私なりにA.P.WORKSのトンマナみたいなものを感じていて。お年賀で配る物として作り始めたからなのか、“だれが使っても違和感がない”デザインを心がけていますね。かわいすぎるとか男性っぽいとかっていう偏りがなくて、たとえば37歳のサラリーマンが持っていても変じゃないものを作ってます。

いろんな種類のプロダクトがありますが、統一されている感じがします。さっきの業者との話のように、作る過程で妥協しないといけない部分もあると思いますが、同じゴールにたどり着くのがすごいなって思います。

増田:年月がそうさせているのかもね。なんとなく作りながらも、自分たちのブランドの雰囲気が染み付いてくる。A.P.WORKSを始めた頃に、「作り手の汗が見えないデザインってかっこいいよね」みたいな話をメンバーとしたことがあって。本当はめちゃくちゃ頑張ってるんだけど、それを見せずにクールに仕上がってるデザインってかっこよくない?みたいな(笑)

(笑)

増田:だから少しかわいくて、少しクールなものをA.P.WORKSで作れたらすごくいいなって思ってた。ちょっとしたひらめきや楽しさを出しつつ、クールに見せすぎないようなデザインにしてるね。

ちょっとびっくりしました。増田さんがおっしゃるような”汗を感じないデザイン”になっていて!

デザイン以外で意識していることはありますか?

増田:人の出した案にもちゃんと意見を言う。人の案だから、その人のやりたいようにする考えはわかるんだけど、それを良くするための意見は言うべきだと思う。摩擦が起きるときもあるけど、解消できるものはしたほうがいい。個人的にはそういう熱い思いを持って昔やってたから、周りの子たちが温度差にちょっとびっくりしてる時期はあったよね(笑)でも、そういう”汗をかくこと”も必要だなと。

藤本:汗かいてますよね!A.P.WORKSの打ち合わせ時間って長かったりするじゃないですか?みんな意見をバンバン言うし、案がひっくり返ったりもするし。

増田:それがプロジェクトを立ち上げるときに気にかけていた、自己満足にならず「人に説明できる物」を作ることでもある。大変だけど、それがあるから良いものになっていくんじゃないかな。みんなの意見を聞いて課題をちゃんとクリアしていく。普通の仕事でも壁を何個か乗り越えないと良いものってできない。一周回って戻ってくることもあるけど、それも意味がある気がする。

アイデアは”組み合わせ”

このようなアイデアを思いつくコツはありますか?

増田:あるものとあるものが組み合わさったときに、アイデアって出てくるような感覚がある。何かが変化する、何かに何かが加わる、何かから何かを削ぎ落とすとか。A.P.WORKSはそういうアイデアが多い。普段から何気ないことをスマホにメモしたりとか、みんながやってる当たり前のことがコツだと思う。メモの内容を発展させることもあるし、あるメモに他のメモをくっつけることもあるし、自分の中でこうすればできるんじゃないか?みたいな感覚が、やり続けてたらちょっとずつ出てくる。大喜利みたいなことかもしれないね。

藤本:大喜利ですよね。私はアイデアを出さないと人に意見を言う筋合いはないと思ってるので、アイデア出しのときは自分でもいくつか案を持っていくって決めてます。ロジックで考えるときは、増田さんも言ったように、何かを「組み合わせる」ことでアイデアを出してますね。「ORUNO」は、折ると絵柄が変わるというアイデア。これは「折るという行為」と「視覚的なデザインを増やす」ことを組み合わせてできています。

そういう目線で見ると面白いですね!

藤本:持つ、折る、破る、掛けるとか。人の行為に対してデザインの力を加えたときに、何か新しい変化が起きる。A.P.WORKSはそういうロジックからできた物が多いかも。

言われてみれば、使い続けることで発見があるデザインが多いですよね。

増田:広告もそうだけど、アイデアを着地させるのが一番難しい。アイデアや発想がありきたりでも、良い着地ができれば新鮮なものにできる。もちろんアイデアも大事だけど、どちらかといえば、それをどうやってデザインに落とし込むかが大事だと思うよ。

これからやってみたいこと

今後の展開としては、どんなことを考えていますか?

増田:今まで通り魅力的なプロダクトを作りつつ、企業の方から声をかけてもらうこともあるので、そこから物を作るラインを強化したいと思います。運営している身としては、ちゃんとビジネスにしたいと思うので。A.P.WORKSの作品を見て、「この人たちに頼みたい」っていう声を増やしていきたい。

藤本:私もA.P.WORKSのブランディングはある程度できていると思ってるので、A.P.WORKSっぽくない柄も作っていきたい。増田さんの言うようにクライアント案件もやりたいので、コロナが落ち着いたら自分から外に営業していきたいなって考えてます。あとは1、2年目の若い子に声をかけて企画をたくさん出してもらって、面白い物を作っていけるといいですね。

増田:人が手に取って使う物を作れるとやっぱり面白いよ。広告にはない魅力がある。

普段はもらったオーダーを形にする仕事をしつつ、A.P.WORKSでは自分たちで一からアイデアを考えて作る。そんな2つの面を持っている会社ってとても魅力的だなって思いました。

こんな後輩と働きたい!

最後にどんな後輩と、一緒に働きたいですか?

増田:長い間いろんな人と仕事してきたけど、一番思うのは”他人ごとを自分ごとに置き換えられる人”は、一緒に仕事していて楽しいかな。そういう人って、どこに行ってもやっていけるんだろうなって思う。おせっかいというか、他の人の仕事にもズケズケ入っていくからインプットできる情報も多い。自分も助かるから、相手を助けたくなる。血の通った関係にも思えるね。

藤本:びっくりしたんですけど、本当に増田さんと一緒です!振られた仕事を自分の案件だと思ってる後輩がいると、何か問題にぶつかったときに、一緒に解決しようとしてくれる。逆に自分ごとじゃないとあまり解決しようとしないし、どうしたらいいんだろう?で終わっちゃう。それよりは「私が解決しないと進まないかもしれない!」と思って動いてくれると、すごくいいなって思います。自分がもう1人いるような感覚というか、同じように考えて悩んでくれる人がいると、安心して仕事ができます。「なんなら、仕事取ってやろう!」って思ってるぐらいのほうが嬉しいし、やりやすい(笑)

増田:あと他人が出した案だとしても、それはみんなの企画だから、自分も関わることなんだよね。そこに対して「自分は何ができるのか?」自分ごととして捉えて、「もっとこうしたほうがいいんじゃないかな?」って思うことがあれば言えばいい。俺はそう思いながらやってるよ。

藤本:一緒に戦う仲間みたいな感じがしますね。